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レポート2017.04.21“真の贖罪”とは…重苦しいテーマも美しい音楽が浄化していく『クロス』上映&舞台挨拶

4月21日(金)、桜坂劇場ホールAで、『クロス』の上映と舞台挨拶が行われ、奥山和由監督、主演の紺野千春さん、音楽を担当した木下航志さんが登壇しました。

『クロス』は、ある殺人事件に関わった加害者の現在がクローズアップされたことをきっかけに、別の殺人事件が呼び起こされていくというストーリー。人間の嫉妬や贖罪、執着、愛情等が複雑に絡み合っていくところが見どころです。

奥山監督からは最初に、「宍戸英紀さんの『クロス』の脚本が若手の登竜門と言われる城戸賞に入選し、さらに今回は沖縄国際映画祭の特別招待作品に選んでいただけたことをうれしく思います」と感謝が伝えられました。作品についても「ささやかな予算で、実験的に作った映画なので、見ていて疑問に思うことも多いかもしれない。けれど、ほぼノーギャラで手伝ってくれた斎藤工くんをはじめ、周囲の人の協力を合わせて勢いで作り上げた熱のある映画になっています」と紹介しました。

続いて、主役を演じた紺野さんも「きれいごとではなく、情念や贖罪など重いテーマを扱った映画ですが、その重さを監督がわかりやすく表現しているので、重みを感じ取りながら見てほしいです」と挨拶。

そして今回、「ボーカルに心酔した」という奥山監督からの要望に応え、はじめて映画音楽を担当したのが、“和製スティービー・ワンダー”の異名を持つ盲目のピアニスト、木下航志さん。「映画音楽を担当するのも初めてですが、出来上がった映画をスクリーンで見るのも初めてです。今回は目以外の五感で、色々な思いを持って映画を見たいと思うので、皆さんは映画と一緒に僕の音楽も楽しんでほしいです」と思いを伝えます。
監督は「映画がつまらなくてもコンサートを楽しみに座っていてほしい」と冗談をとばし、挨拶を締めくくりました。

本編上映後、キーボードをステージ中央に置き、木下さんのミニコンサートが開かれました。1曲目は「アメイジング・グレイス」、2曲目はMONGOL800からプレゼントされたという曲「pray (祈り)」。そして3曲目には、映画の主題歌「Just a Closer Walk with Thee~輝く明日へ僕は歩く」を披露。力強い演奏と伸びやかな歌声に観客は魅了され、大きな拍手に包まれてミニコンサートは幕を閉じました。

終演後、会場の外では「みなさんがこの作品に抱いた思いを聞く機会を設けたい」と、奥山監督と紺野さんが、観客一人ずつに声をかけて見送るというサプライズなシーンも。重いテーマとはうらはらに、美しい音楽と作り手の心の細やかさに、心が浄化されるような上映会となりました。