ニュース

レポート2017.04.23「もう本書いちゃってください!」竹若、大御所に懇願!? 桜坂映画大学『ア・ホーマンス』

4月23日(日)、桜坂劇場ホールCで「桜坂映画大学 『ア・ホーマンス』」が行われ、特別講師のキネマ旬報社や角川映画の元社長・黒井和男さん、映画監督の山本俊輔さん、大阪の名物バンド「赤犬」のロビン前田さんと、桜坂映画大学のプログラムを担当した谷口仁則さん、なたぎ武、MCを務めるバッファロー吾郎の竹若元博、2丁拳銃の川谷修二が登壇。名俳優・松田優作最初で最後の監督作として知られている『ア・ホーマンス』ですが、オープニングでは、なたぎ武が「松田優作でございます」と自己紹介し、総ツッコミを入れられる場面も見られました。

上映前のトークでは、黒井さんが「俺の話は裏方の話ばっかりだから一般の人に話しても面白くないよ」と謙遜。「それが聞きたいんです!」と竹若が食い下がると、「じゃ、コッポラと喧嘩した話からしようか?」と、いきなりのハイブロウ。他にもアメリカではドラマスペシャルとして扱われていた『激突』を劇場版として日本で上映する際にスピルバーグ監督とやりあった話など、それぞれの話題だけでイベントが組めそうな内容に、客席のみならずステージ上の他のメンバーまで圧倒されていました。

映画が始まってからも、山本さんの解説と黒井さんの裏話のコンボで会場は驚きの連続。「ナイトシーンが多いって言うのはボロ隠しによく使う手法なんだ」、「今の映画と絵の作り方が違うでしょ? 今はデジタルでたくさん撮れるからワンカットを何台ものカメラで撮ったり、細かくカットして編集ができるけど、この時代はフィルムだから長回しが多いの」、「色調が全体的にブルーなのは仙元さん(『ア・ホーマンス』のカメラ担当)が生み出したもの。(北野武の作品も)“タケシブルー”って言われているけど、あれはカメラマンが仙元さんのお弟子さんだから」といった撮影技法の話から、「大島渚が『天草四郎時貞』を撮ったとき、夜のシーンで何にも写ってなくて映写機の故障かと思われたの。でもね、大島は『江戸時代にはロウソクの明かりしかなかったんだから、ロウソクの光量で風景まで見えるわけがないだろう!』って反論してね。だから東映とはこの1本しか仕事してないんだ」、「本当は『ブラック・レイン』の優作の役は萩原健一の予定だったんだけど、マイケル・ダグラスに直談判して変更になったんだよね」など、観客も思わずうなる名作の裏話が飛び出しました。

上映が終わってもメンバーはアフタートークで大盛り上がり。「長回しとか無音の風景とかが長いけど、この時代は“お客さんに想像してもらう”っていうのが大事だった。今は“お客さんにわかりやすく作る”っていうのが当たり前になった」と山本さんが話すと、黒井さんも「優作が死んだ頃から、映画が客を育てることをやめたからね」としみじみ。さらに『ア・ホーマンス』を製作したセントラル・アーツについても「ちょうどこの頃、東映に外国映画部門ができたばかりで、この作品は日本映画だけど外国映画として配給を行ったの」という話や『人間の証明』の撮影裏話、果てはスキャンダルのもみ消し方まで、終始“黒井節”が炸裂しました。

ついには興奮のあまり、ステージの前ギリギリまで寄ってしゃべり続ける黒井さんに「黒井さん、もうこれ本書いてください!」と、竹若がストップをかける一幕も。講師たちの降壇後、川谷が「来年は黒井さんのスペシャルトークショーをやろう」と提案すると、「2時間もあったら客席越えて後ろの壁まで行くんじゃない?」(竹若)、「いやいや、しゃべりながら空港まで行っちゃうかも」(なだぎ)と2人が悪ノリして会場の笑いを誘うなど、終始盛り上がりの中、イベントが終了しました。